芸能関係者(俳優・声優・タレント・モデル・アーティスト)の契約法務
①所属に関する契約法務
俳優、声優、タレント、モデル、アーティスト等の芸能関係者(以下「芸能関係者」といいます)が、各種芸能事務所に所属する際には、事務所との間でマネジメント契約を締結するのが一般的ですが、通常、事務所所属から世に名前が出て売れるまでの間は、芸能関係者は事務所から一定の給与保証をされることもあります。このような事情を背景として、芸能関係者と芸能事務所との力関係は大きく、対等な交渉は難しいことから、所属期間、各種収入・経費の配分比率、芸名の利用、活動に伴って生じた著作権等の権利の帰属、移籍時の違約金条項、SNSの利用等の面で芸能関係者に不利益なマネジメント契約を締結せざるを得ないことがあり得ます。
これに対し、公正取引委員会も、「所属事務所が芸能⼈と⼗分な協議を⾏わずに⼀⽅的に著しく低い報酬での取引を要請すること」や「芸能⼈に属する各種権利(⽒名肖像権、芸能活動に伴う知的財産権等)を芸能事務所に譲渡・帰属させているにもかかわらず、当該権利に対する対価を⽀払わないこと」を優越的地位の濫用として独占禁止法上問題のありうる行為して注視しており、「無名の頃から育てているのだから」という従前の業界慣行や考え方はアップデートされていくべきです。
また、同委員会は、「契約等を書面によらず口頭で行うことは、直ちに独占禁止法上問題となるものではないものの、優越的地位の乱用の独占禁止法上問題となる行為を誘発する原因となり得るため、競争政策上望ましくない」と、契約書の作成が推奨されているところ、単に事務所の契約書雛形に押印するのではなく、自らの芸能人としての自己実現に必要な契約内容に修正したうえで、マネジメント契約を締結することが必要です。
当事務所では、所属する芸能関係者にとって合理的な内容のマネジメント契約こそが、所属事務所の利益を最大化するとの考えのもと、芸能関係者にとって合理的なマネジメント契約締結に向けたアドバイスや代行、契約書の作成・レビュー等、事務所所属に関わるコンサルティングを行います。
②移籍・独立交渉
芸能関係者の独立や移籍に際し、事務所から多額の違約金を請求されたり、退所後数年間は芸能活動ができない、芸名を継続して利用できないなど、契約に関するトラブルが多く起こっています。これは主にマネジメント契約において、長期の契約期間が定められている、更新規定がある、事務所が芸名に関する権利を有しているなど、芸能関係者にとって不利益な内容の定めがあることが原因です。
公正取引委員会も、「所属事務所が、契約終了後は⼀定期間芸能活動を⾏えない旨の義務を課し、⼜は移籍・独⽴した場合には芸能活動を妨害する旨⽰唆して、移籍・独⽴を諦めさせること」、「契約満了時に芸能⼈が契約更新を拒否する場合でも、所属事務所のみの判断により、契約を⼀⽅的に更新できる旨の条項を契約に盛り込み、これを⾏使すること」、「前所属事務所が、出演先(テレビ局等)や移籍先に圧⼒を掛け、独⽴・移籍した芸能⼈の芸能活動を妨害すること」を独占禁止法上問題のありうる行為して注視しており、そのような働きかけをして移籍・独立を阻むことに対しては、弁護士が間に入り適切に対応することが必要です。
また、退所にあたって芸能関係者の労働者性、すなわち、芸能関係者は労働者として雇用契約関係にあったのかどうかの意見の対立が先鋭化することもあります。労働者性が認められれば、芸能関係者は労働法上の保護を受ける対象となり、違約金の定めや他事務所での芸能活動の禁止を定める契約条項は労働法上認められないこととなり得るからです。その他、事務所移籍時には、第三者との契約の取扱い、商品の著作権帰属、ファンクラブ、SNSアカウントの取扱い、芸名の継続使用等、多くの点についての交渉が必要となります。
当事務所では、芸能関係者が自らの自己実現の場を選ぶことができるよう、事務所との間での移籍・独立交渉を行います。
③ハラスメントに関する相談
芸能関係者が、実際に各種ハラスメントを受けた場合には、プライバシーに配慮した上で迅速に当該ハラスメントを停止させる等の措置を要求して、その権利救済に努めます。